Scenes of New Habitations

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住むの風景

2021年10月6日 – 8日 丸森

柴原聡子, 瀬尾夏美

2021年10月6日~8日、宮城県丸森町へ。小森はるか+瀬尾夏美の作品制作に伴い、現地の方々にお話を聞く。
今回が初めての訪問、かつ下見をかねているため、今年の春から丸森町でリサーチや撮影を行っている彼女たちの取材やワークショップに帯同する。

初日は、元消防職員でご自宅が浸水被害にあったというSさんにお話を聞く。お仕事柄、防災についてとても詳しい。冷静に、被害の状況や原因を語ってくださった姿が印象的だった。
翌朝、宿泊地のすぐそばにあるキャンプ場に行ってみる。阿武隈川沿いにあり、川遊びなどが特徴のよう。ただ、近くにはまだ傷跡生々しい壊れた橋や根本からごっそり抜けた巨大な流木などが横たわっている。大きい石がたくさんあることがすぐ目に留まる。瀬尾さんによると、ここは巨石が多い地域で、地盤も堅くて強いらしい。ただ、2019年の台風ではそれらの巨石が上流からたくさん転がってきてしまい、その石が被害の原因になった部分もあるという。
キャンプ場の上流では、土木工事が進んでいた。具体的にどのような工事をしているかまではわからなかったが、川底にたまってしまった土砂を取り除いているように見えた。

小森さんと瀬尾さんが企画した地元の老若男女(と表すのにふさわしい、バラエティに富んだ参加者たち)によるワークショップや、太陽光発電施設の近くに住んで牛を育てているご夫婦のお話など、いずれも興味深かった。これについては、彼女たちが11月6日から始まる東京都写真美術館での企画展「記憶は地に沁み、風を越え 日本の新進作家 vol. 18」に詳しいので、ここでは割愛する。

東日本大震災の被災地に比べ、山間部ということもあってか、集落は各所にあれど、住宅は、かなり散らばっているように見えた。そのぶん、家々の密度は低い。その密度に反して(?)、いたるところで堤防や護岸の工事をしている。とてものどかな風景で、川のせせらぎや、木の葉がこすれる音、鳥や虫の声といった日本の里山らしい音が聞こえる中、どこに行っても、工事の音がうっすら混じる。重機が動く低い機械音や、何かをたたいたりするカンカンといった音。とくに目立つわけでもない、同じくらいの音量で、通奏低音のように鳴っている。

そのことがとても奇妙に感じた。丸森町は町といってもかなり広域だ。でも、どこでも工事の音がしている。まるで瞑想や睡眠導入音楽のような、美しい自然の音に重なる機械の音。
この引っかかりが、ひとつの手応えになりそうな気がしている。
(柴原聡子)