20231215
FUTURE HABITAT PROJECT 2023 in Indonasia
2021年から活動が始まったFuture Habitat Project。
今回は、初めての海外調査として、インドネシアのジャカルタとバンダ・アチェを訪問した。
土地の人々のことばと風景の記録を大切に考えながら、絵や文章を制作するアーティストである瀬尾夏美さん(一般社団法人NOOK)とアートと建築の分野で編集・執筆・企画・広報として活動する編集者の柴原聡子さんを含む、計6名のメンバーが参加した。
10月3日-10月5日 ジャカルタ
旅の前半は、インドネシアの首都であるジャカルタでの水害対策調査を行った。
ジャカルタでは、頻繁に大雨による洪水や地盤が沈下したエリアでの大潮による被害が相次いでいる。今回は、ジャカルタの中でも、ジャワ島北西部を流れるチリウン川沿いの集落Kampongや水門を訪れた。
*Kampong(インドネシア語)とは、「原住民の村」を意味する。民族や文化の中心的存在であり、家族や隣人同士の結びつきが強い場所として知られている。
2016年、州行政の施策により、Kampong Akuarium(写真右)は強制的に立ち退かされ、その後住民参加型で再建された。かつては川沿いに広がる集落だったが、政府の介入により、5階建ての集合住宅に姿を変え、人々の生活様式も大きく変化した。
以前は、住民間のコミュニケーションが活発で、地域に開かれた生活形態を持っていたが、立体的な住環境になったことで、内部は暗く閉じられた環境になってしまった。水害対策は十分に行われ、被害への危機感は薄れたが、根付いていたコミュニティが希薄化していく様子が感じられた。
現地の方々のお話を通じて、進む開発と取り残される住民の思いのギャップを埋めることの難しさを強く感じた。
一方で、以前から変わらず残るKampong(写真左)は、子供から年配の方まで幅広い年代の住民が共に生活し、住民間のコミュニケーションも活発で、地域一帯となって生活を築いている。
このエリアは海抜よりも低い地盤に位置しているが、1995年ごろに建設された水門によって大きな被害は被っていない状況。
Pintu Air Manggarai
この水門は、ジャカルタ南部から北海岸までの運河を経由し、水をジャカルタの外に迂回させることでチリウン川の治水の一環となっている。高潮・洪水・大雨など様々な災害リスクに備え、その際には手動で調整が行われる。また、ここでは、水門の作業を妨害するゴミの山の問題に直面している。水面には多くのゴミが浮かんでおり、それによって巨大化した夥しい数の外来魚が飛び跳ねていた。しばらく様子を見ていると、おじさんが現れ、慣れた手付きで網を使って捕獲し始めた。これらの魚は食用として利用されるか、または川の保全活動のための捕獲と思われるが、具体的な行き先は不明とのこと。
Slamet Riyadi area
ここは、2002年に大きな被害を受けた地域。川を挟んで、新しいエリア(写真左)と古いエリア(写真右)が共存している。旧エリアのKampongの塀の裏側には、17世紀ごろから軍の施設が存在し、このKampongは川と軍の狭間に作られた。
このKampongで生活を営む男性にインタビューを実施。この方は、2002年の洪水を経験し、その後の2003年以降の仮設住宅再建にも関与。再建された住宅(竹製の高床式住居)は避難場所の確保や貴重品の保管のために2階建てに生まれ変わった。2002年以降、小川が繋がったことで、水位上昇時や浸水発生時に、流水が分散されるようになったことから、大きな被害は出ていないとのこと。
Kampung Melayu
Kampong Melayuは、蛇行する河川に位置し、ジャカルタの中でも特に水害と隣り合わせで生活を営む集落である。高低差が顕著であり、それに伴い住宅ごとに浸水リスクも異なっている。土地の高低差が特に大きい場所では、水位が3.3メートルに達することもあったそうだ。
浸水が頻発するため、Kampongの対岸では、護岸整備が進められている。この集落でも同様に護岸整備の計画があるが、住民たちは釣りの場所の喪失や住宅のオフセットによる居住空間の減少などを理由に、現状のままでの生活を好んで修復を続けている。
バンダ・アチェに向かう移動日には、世界最大級のモスク「イスティクラル」(1978年)を訪問。
このモスクは、インドネシア独立の象徴として建設され、国家の一体感を示す場所とされている。
円形のドームが印象的であり、内部は非常に広く、最大で10万人以上の礼拝者を収容できると言われている。また、隣接するキリスト教会の姿が中庭から見えた。この光景は宗教的な多様性を象徴している。